第二章

11/17

903人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
「……ノックぐらいしてよ」 「ああ、スマン。そうか。忘れていた」 「……」  今思い出したというような顔をするので、本当に忘れていたのだろう。  逸見の所には、ノック無しで入っているに違いない。 (ま、いっか)  仮に入浴中であっても、他人に見られて恥じらうような可愛げは当の昔に捨てている。  ところで今何時なんだと掛け時計を見遣ると、今しがた二十三時を回った所だった。 「今帰ってきたの? 飲み会?」 「仕事だ。昨日の埋め合わせが少しな」 「昨日? 無理して帰ってきてたの? 別に、飯ぐらい勝手に食べたのに」 「初日から一人飯をさせるほど、甲斐性無しではない」  新婚かな?  思わず突っ込みそうになった言葉を飲み込んで、代わりに結月は吹き出した。 「なにそれ」  雇った情報屋を警戒するどころか気を使うなんて、彼の認識は明らかにズレている。だが、嫌いじゃない。  口元に手を添えクスクスと笑みを零しながら、結月は自身の中で、何かが緩んだのを感じた。 「今日の進捗、聞く?」 「ああ」  その為に来たのだろう。  仁志が頷いたのを確認して、結月はパソコンの表示を例のホームページへ切り替える。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

903人が本棚に入れています
本棚に追加