第二章

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「例の『ファストツーリスト』だけど、確かになんかきな臭いね。一流ホテルとか、人気旅館とか、元々集客力のあるトコは格安プランと正規プランがあるのに、ちょっと体力のなさそうな場所だと、格安プランオンリーになっててさ。ちょっと調べてみたんだけど、ここで取り扱われてる格安プランオンリーの宿って、他の旅行サイトには一切登録がないんだよね。つまり、ここ専任の場所ってやつ」 「そんな事までわかるのか」 「一応、『情報屋』だかんね。ツテを使うのも『技術』のウチだよ。……確かにさ、見方を変えればこうやって幅広く展開してる良心的な会社ってコトなんだろうけど、流石に対象の宿泊施設自体に、直接の予約を禁止させるのは、やり過ぎだと思うんだよねぇ」  仁志が眉根を寄せる。 「……どういう事だ」 「言葉の通りだよ。彼らは直接の予約を受け付けていない。ホームページがあればご丁寧に『ファストツーリスト』のリンクを張って『こちらからのみ』って誘導してるし、電話予約も承っておりませんって状態。でもさ、場所によっては通常プランの記載が『まだ』残っているんだよねぇ。じゃあそのプランは一体、どこから申し込めるのやら」  意味ありげに口角を上げた結月に仁志は目を細め、画面へと視線を流すと考えこむように口を閉ざした。  その脳内ではどんな思考が巡っているのだろう。結月は静かに言葉を待つ。
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