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宛先には先程のアドレス。クリック二回で表示された入力ボックスにパスワードを打ち込むと、開かれたメールには確認完了の報告に、残り半分の依頼料を振り込んだ旨が記載されていた。
結月はマウスに手を乗せたまま、仕事用のネット口座を確認する。滞り無く振り込まれていた金額を確認し、やっと終わったと両腕を伸ばしてから壁際のベッドにダイブした。
取り立てて問題がなければ、必要以上のやり取りは行わない。それも、結月が『師匠』の時から変えていないルールである。
結月の仕事は情報屋である。依頼を受け、文字通り様々な手段を使い依頼主の望む情報を手に入れ、報告し、報酬を得ていた。
表立って公言できるような生業ではないため、当然、広告などは一切出していないが、『師匠』の時から変わらない成功率が功を奏し、今では日陰界隈のちょっとした有名ドコロである。
最近では多い時は三日に一度は依頼が舞い込んで来ていた。情報社会と言われる世の中、秘めやかに手に入れたい情報もごまんとあるのだろう。
「あー……つっかれた」
仕事がないよりはあった方がいい。だが、内容が内容なだけに、たった一度の『仕事』で神経も身体も摩耗する。
どうせ誰にも聞こえないしと独り言を盛大に零して、結月は下敷きにした掛け布団の温もりに誘われるまま、瞼を下ろした。
確か、次の依頼はまだ届いていなかった筈だ。
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