902人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
ともかく土竜は結月の『家族』である。例え、『師匠』が居なくなってしまっても。
『で、どうだ? 例の色男とは上手くやっているか?』
「……たぶん」
『なんだ。随分と歯切れが悪いな? 抱かれたか?』
「ちっがうから!」
キスはされたけど。といっても、唇ではなく頬だ。
どうせ言った所で茶化す材料を与えるだけだと飲み込んで、結月は眉を顰めた。
「なんなの、アイツ。人の話しは聞かないし、行動も思考もわけわかんない」
『ほう? どうやら仲良くやってるみたいだな』
「どこにその判断に辿り着く要素があった?」
『わけがわからない、ってコトは、理解しようとしてるってコトだろ? 他人に興味を示さねーお前が、随分な進歩じゃねーか』
感慨深そうな声に、結月は思わず「うっ」と詰まった。
確かに。今までは理解の及ばない相手がいても、それが客にしろターゲットにしろ、「そういうモノだ」と一蹴して特に気に病んだ覚えはない。
それが今回はどうした。
「っ、でもそれは、一ヶ月の住み込み専属とかいう特殊な環境があって、顔つき合わせて過ごす時間が多いからってだけで」
『まぁ、そういうコトにしといてやるか』
最初のコメントを投稿しよう!