第四章

6/6
896人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
 間違いではない。現に土竜は、仕事先での『師匠』を知らない。『方法』は知っているようだったが、仕事終わりの師匠には、決まって『お疲れさん』と言うだけだった。  それが、知る必要がないという割りきった大人の余裕だったのか、知りたくないと思っていたからなのかは、未だに判断がつかない。  けれどもやっぱり、『師匠』の根底を知るのは、土竜しか居ないと思うのだ。 『それにな、結月。月は日によって形を変えるものだ』  言い聞かせるように紡ぐ土竜の声は、やはり穏やかだ。 『少なくとも俺は、お前の変化を、嬉しいと思うぞ』  彼の言う『親』の顔で微笑む『家族』を脳裏に浮かべながら、結月は懐かしさに「……そっか」と目を閉じた。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!