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「君のおじいさんをよく知っている。我々の一員だったからな」
僕は背筋に悪寒がした。
「申し遅れたな、俺はエルピス団長のタイロスだ。君のおじいさんとは仲がよかった。」
この男が噂に名高いエルピスの長、そんな大物が僕の目の前に、それだけじゃない、じいちゃんがエルピスの一員だって!
「君のおじいさんからよく聞かされていたよ。孫はとても筋がいいとな、将来町で一番の整備士になるだろうと」
そうか、だから腕の立つ整備士を探していたのか。けれど見当違いも甚だしい。この男タイロスに対してではない、じいちゃんに対してだ。
僕が筋がいいだって?今のこの有り様は?僕の前から姿を消したと思ったら何も告げずにエルピスに入ってたって?
何もかもがじいちゃんは見当違いだよ、ここに残って一緒に整備士をしていればもう少し楽な生活になったかもしれないのに、僕ももう少し腕が良くなったかもしれないのに、この工場だってこんなに廃れずに住んだかもしれないのに
「じいちゃんは、今何してるの」
「行方がわからない、生死も不明、ある遺跡を散策中に崩れて君のおじいさんを含めた数名が生き埋めとなった。掘り返して下敷きになった奴等を救出したが君のおじいさんだけが見つからなかった」
「死んだんだ」
「死体は見つかってない、遺跡は奥深くまで繋がって出口があった。生き延びている可能性は高い」
「何の為に?何の為にそんなことするのさ、トレジャーハンターだって?命を掛けてお宝を探す?そんなの馬鹿みたいだよ」
タイロスに訴えかけたが、タイロスに訴えかけたのではない。じいちゃんに訴えたかったのだ。生きていたとしても死にかけたわけだ、お宝なんかに目が眩んで。
「君の言うように馬鹿みたいな答えになるが、俺達はお宝を探してるんじゃない、俺達が探してるのは夢だよ、まだ誰も見付けたことがない物、本当にあるかも分からない物、それを見つけ出す事を生き甲斐としている。 確かに馬鹿だが人生をただ燻(クスブ)って生きるよりも価値がある」
僕は彼の目を見た、最初に見たとき同様、彼の目は今も鋭く輝いて見える。今の自分はどうだろう、トグロにも馬鹿にされるような毎日、僕の目は黒く淀んでいるのではないだろうか。果たしてそれは生きていて意味のあるものなのだろうか。
僕が馬鹿と蔑んだ彼らの方がよっぽど生きている。
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