嫌いになれない幼馴染

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 二人の関係が変化したのは、徹大が中学校に入ってからだ。中学生になった途端、徹大の女好きな性質が発動した。 「俺、彼女、出来たんだぜ、瑞樹」 「彼女……」 「すっげぇ可愛いんだ。んでさ、キス、しちった」  嬉しそうに彼女の話をする徹大。瑞樹は耳に膜が張ったように感じて、徹大の声が聞こえなくなる。徹大の話を聞いてあげたいのに、耳が勝手に聞こえなくなる。 ――てっちゃんが、女の子と、キス。  聞いてしまった事実は記憶から消せない。瑞樹は心臓がきゅうっと締め付けられる感覚に驚いた。死んでしまうかもしれない程の痛みに、どこか悪いのかと思った程だ。  瑞樹が中学入学した頃から、徹大と放課後や休みの日を過ごす機会は激減した。常に彼女と共に過ごす徹大。休み時間の廊下、放課後の校庭。休みの日は徹大が彼女と自転車で遊びに行く姿を、瑞樹は自分の部屋の窓から何度も見かけた。  この頃には瑞樹は自分の気持ちに気付いていた。瑞樹は徹大が好きなのだ。しかしこの思いは決して告げられない。当たり前だ。男が男を好きになるなんてあり得ない。徹大は女にしか興味がない普通の男子。もし好きだなんてばれたら、幼馴染でさえもいられない。
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