嫌いになれない幼馴染

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《第3話 滲む涙》  それからしばらく瑞樹は潤の家に厄介になることにした。  徹大、潤、瑞樹、三人は同郷だが、今は地元を離れている。地元から特急で二時間離れた県外の街に住んでいるのだ。周辺地域の若者達が刺激を求め移り住む、程々の都会。 徹大と瑞樹は一緒に住んでいるが、潤は少し離れた所で一人暮らしをしている。現在潤には彼女がいないことは予め確認済なので、間借りしてもとりあえずは問題ない。  騒動翌日の日中、瑞樹は徹大と住む家に一旦戻った。瑞樹は仕事が休みだが、徹大は仕事で不在だ。その隙を狙って、必要最低限の荷物を取りに来た。  徹大がいないと分かっていても、玄関ドアを開けるのは怖い。徹大と女が抱き合う昨日の光景がフラッシュバックしそうで、瑞樹は頭を大きく振り、邪念を取り払い、思い切って家に入る。  当然だが家は無人で静かだった。昨日散らかっていた玄関は、靴が揃えられ整頓されていた。徹大は意外と綺麗好きで、いつも家の中を清潔に保ってくれる。  それなのに昨日は徹大の部屋をめちゃくちゃにしてしまった。瑞樹は冷静になると、相当酷いことをしてしまったことに気づく。徹大が大事にしていた雑誌も破ってしまった。あれはきっと瑞樹の看護師としての参考書を破かれるのと同じことなのだ。
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