嫌いになれない幼馴染

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 瑞樹は徹大の部屋の前に立ち竦むが、この部屋に入る勇気はなかった。そのまま踵を返し、自分の部屋に入る。着替え、参考書、身の回りの品を急いでバッグに纏めた。  自分の準備が終わり、リビングに向かう。つい一昨日まで瑞樹の日常はここにあった。  二人がけのリビングテーブル。  茶色のソファ。  柔らかさがお気に入りの同色のクッション。  瑞樹が出て行っても何も変わらない風景。  変えようとしているのは、瑞樹。    ここを飛び出し、徹大との生活を終わらせようとしている。  そう思うと、途端に瑞樹の目から涙が溢れる。思い出すのは、楽しい出来事ばかり。  おしゃべりしながらの食事。  映画鑑賞をする夜。  家呑みで酔っ払う瑞樹。  優しく介抱してくれる徹大。  そして、ソファでのキス。  徹大は瑞樹を好きでもないくせに、頻繁にキスしてきた。気が向いた時だけ、もしくは彼女がいない時限定で、お互いの体を触れ合わせることもあった。誘ってくるのはいつも徹大で、瑞樹から誘うなんてありえないことだった。
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