嫌いになれない幼馴染

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 本当に酷い幼馴染だと思う。  瑞樹の気持ちを分かっていて、弄んでいたのだろう。 「てっちゃん……」  それでも瑞樹は徹大を嫌いになれないのだ。  瑞樹はひとしきり泣くと、目を手の甲で拭う。ふとキッチンの流しを見ると、朝食の食器がそのまま放置してあった。 きっと寝坊して洗う時間がなかったのだろう。瑞樹はダウンジャケットを脱ぎ、腕まくりをしてそれらを洗い出した。  キッチンを綺麗にしたら、もうすることがない。  帰り際、テーブルに一万円札を置いた。大事にしていた雑誌を破ったことを詫びたメモを添えておいた。  まだ徹大が戻る時間ではないが、鉢合わせしたくない瑞樹は慌てて我が家を後にした。              瑞樹が徹大と離れて一ヶ月が経とうとしている。その間、徹大からは電話もメールもない。でもそれは当たり前。瑞樹は家を出てすぐに着信拒否にしていた。着信拒否にしないままで、もし何も連絡がなかったらと思うと、怖くて仕方がなかった。 「瑞樹ちゃん、最近ずっと元気ないね」
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