嫌いになれない幼馴染

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 先輩看護師の日埜(ひの)に声をかけられる。 「えっ! そうですかっ?」 「自覚なし? 今、すっごい溜息ついてたよ」  瑞樹は病棟看護師だ。  今は昼食の配膳準備を日埜と二人で行っている。 「すみません……」 「いいけどさ、仕事のことで悩んでる?」 「いえ……」 「じゃあ、プライベートかな? 悩み過ぎて仕事に支障がないようにね」  日埜は面倒見のいい女性だ。きっと意気消沈している瑞樹を見かねて声をかけてくれたのだ。徹大のことで悩みまくっている瑞樹だが、仕事をしている方が気が紛れていた。なのでまさか自分が溜息をついているとは気付いていなかった。 「ありがとうございます、日埜さん。気にしていただいて」 「病棟のアイドル、瑞樹ちゃんだもん。いつもニコニコしていて貰わないと患者さんも元気なくなっちゃう」  瑞樹は今年の春、三年制看護専門学校を卒業した、一年目看護師だ。勤務先の病院では、人や環境にとても恵まれている。激務だが看護師を辞めようと思ったことはない。
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