嫌いになれない幼馴染

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《第5話 優しい先輩》 「瑞樹」 「へっ? あっ、俺」 「こんなとこで寝て、風邪ひくぞ」  瑞樹は潤に揺さ振られ、目が覚めた。  定時で上がった瑞樹は、夕飯の買い物をしてから潤の家に帰っていた。スーパー以外に寄り道するところもなく、午後六時過ぎには帰宅した。お世話になっている潤のために、苦手な料理を頑張ってみた。とは言え、唯一作れるカレーだが。  作り終えて気が抜けたのか、ソファで居眠りしてしまったらしい。 「カレー作ってくれたんだな。悪い、今日飲んできた」 「あ、そうなんだ」  時計を見ると午後十時を過ぎていた。 「いいよ、俺が勝手に作ったんだし。カレーなら何日か持つでしょ」 「助かるよ。瑞樹、カレーは作れるんだな」  潤は瑞樹が料理が苦手な事を知っている。 「うん、てっちゃんに教えてもらって、あっ……」  また徹大だ。もうさよならしようとしているのに、無意識に徹大の名前を口にする自分が瑞樹は嫌になる。どれだけ徹大が瑞樹に染み付いているのだろうか。
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