嫌いになれない幼馴染

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「そうか、徹大仕込みか。あいつ、無駄に料理上手いもんな」  潤は瑞樹の動揺に特に触れることなく、会話を続ける。瑞樹は潤のこういうフラットな性格が大好きなのだ。 「潤くん、飲んできたんだ。ねえ、俺も飲んでいい? ビール買ってきたんだ」 「飲み過ぎるなよ」  そう言うと潤は風呂場に向かう。  瑞樹は冷蔵庫からビールを取り出し口をつけた。結局夕飯を食べていないので、アルコールが胃に染み渡る。 「またてっちゃんの夢かあ」  同じ高校に通って、徹大の側にいても何も変わらなかった。瑞樹はただの幼馴染のまま。他の友人より少しだけ贔屓されていたかもしれないが、でもそれだけだった。どう足掻いても、そこからは昇格しない。瑞樹の思いが徹大に届くことはありえない。 「瑞樹、酔っ払うなよ」 「出るの、はやっ、潤くん。ちゃんと洗った?」 「失礼だな」  潤は本当に汗と汚れだけ流しただけで、すぐ風呂から上がってきた。 「潤くん、お水飲む?」 「自分でするから、気使うな」
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