嫌いになれない幼馴染

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 瑞樹は自分で言っていて、また涙が出そうになる。 「そうかな。俺は男を好きになったことはないが、瑞樹は好きだぞ」 「潤くんに好かれてもなあ」 「おい」 「うそうそ、ありがと、潤くん」  徹大への十年もの片思い。瑞樹が徹大を好きだと潤に打ち明けたのは、徹大とルームシェアをした後、今から2年前だ。  徹大の度重なる外泊。女と一緒にいるのだと思うと、嫉妬で身を切られる程辛い。そんな夜、どうしても一人でいられなくて潤をよく訪ねた。潤は高校卒業後、大学に進学した。それ以来ずっと一人暮らしだ。  誰にも言えない徹大への思い。気持ち悪がられるのを覚悟で潤に打ち明けた。しかし潤は「そうか、辛いな」とだけ言い、瑞樹を受け入れた。その時から潤が瑞樹の心の拠り所だ。だから徹大の家を飛び出した後、甘えて世話になっている。  いつの間にか瑞樹はビール二本目を手にしていた。 「明日、日勤じゃないのか」 「ダーイジョーブ。俺、明日に引き摺らないタイプだから」  瑞樹は潤の肩に頭を乗せる。 「あーあ、本当に、どうして潤くんが俺の恋人じゃないんだろう。俺、なんでてっちゃん、こんなに好きなのかなあ。ねえ、どうしてだと思う? 潤くん」 「あいつはチャラいけど基本いい奴だ。それに瑞樹には他の誰よりも優しく接しているからな。好きになっても仕方がないさ」
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