嫌いになれない幼馴染

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 瑞樹の酔っ払いな質問にも、潤が丁寧に回答をくれる。 「嘘だ。てっちゃんは俺に全然優しくない。意地悪ばかりだ。好きじゃないくせにキスとかするし」 「いくらタラシでも、好きじゃない奴にキスはしないだろう」 「でも潤くんは好きじゃない女の子と付き合ってキスするでしょ?」  瑞樹の的を得た指摘に、潤が口を噤むのが分かる。 「ほらね、みんな、そうなんだよ。好きじゃなくても付き合うし、キスするし、エッチもするんだ」 「瑞樹、絡み酒ならもう寝ろ」 「だったらてっちゃん、なんで俺とエッチしないのかなあ。やっぱ、男なんか、ダメなんだろうなあ」 「瑞樹」  アルコールを翌日に残さない体質は本当だが、空きっ腹に飲んだビールは思いの外瑞樹を酔わせた。 「潤くん、抱き締めて」 「ああ、いいよ」  潤が瑞樹を抱き締める。大きな体に包まれて、瑞樹は安心する。 「潤くんにはこうして甘えられるのに、どうしててっちゃんには何も言えないのかなあ」 「瑞樹が俺のこと、何とも思ってないからさ」 「そんなことないよ。潤くん、好きだよ」 「徹大を好きなのとは違うだろう?」 「どうだろう、もう、分かんない」  瑞樹は潤の腕の中で意識を失った。
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