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「うわっ、さみぃ」
徹大は急に寒くなったことで目を覚ました。
「なんだ、瑞樹か」
悪びれもせず、徹大は二度寝しようと剥がされた布団をかけ直す。
「てっちゃん、俺のこと、バカにしてる?」
「え?」
「なんで、俺たちの家に女連れ込んでんの?」
「女……? あっ」
徹大はようやく隣に女が寝ていることを思い出したようだ。
「違うんだ、これは」
「何が違うんだよ、俺、もう嫌だ。もう耐えられない」
「瑞樹、聞けって」
「何よぉ、朝っぱらからうるさいわねぇ、徹大ぅ」
事情を知らない女が騒ぎに気付き、ようやく目を覚ます。そしてあろうことか徹大に抱きついた。女は上半身はノーブラ、下はショーツしか身に付けておらず、情事の事実は疑いようがない。
「ば、ばかっ。抱きつくなっ」
「なんでよぉ、昨日あんなにエッチしたじゃん」
瑞樹はいちゃつく徹大と女の姿を醒めた目で見つめた。
――俺って、てっちゃんの何なんだ?
そう思うと、心の奥から悲しみと怒りが入り混じった何かが湧いてくる。瑞樹は無言で棚に置いてある物を掴み、床に叩きつけた。何を掴んだか分からないが、それはものすごい音を立てて散らばった。
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