嫌いになれない幼馴染

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《第6話 初めてのキス》  瑞樹が絶望したのは、今回が初めてではない。  瑞樹が高校二年生の時、徹大に本命の彼女が出来た。あんなに取っ替え引っ替えして女子と付き合っていた徹大が、他校の女子生徒にマジ惚れしたらしいと噂が流れた。相手は徹大と同じ学年で、近隣お嬢様高校の生徒。絶世の美少女と近辺の高校生で知らない者はいない程の有名人だった。 「て、てっちゃん、彼女出来たって、本当?」  瑞樹はその頃は滅多に使えなくなった幼馴染特権を使って、夜、徹大の部屋を訪ねた。 「一凛(いちか)のことか?」  今まで何度か同じ質問をした。しかし、彼女はいないといつも同じ返事だった。今回もその答えを期待していたが、それはあっさりと裏切られる。 「ああ、彼女だよ」  一凛を彼女と認める徹大は、いつになく真剣な顔だった。彼女を本当に愛しているのだろう。 「そ、そうなんだ」  瑞樹はこの時笑えているかどうか、そればかりが気になっていた。泣いたらいけない。その事ばかりに気を取られていた。 「俺、高校卒業したら、一凛とこの街を出る。将来は結婚したいって思ってるんだ」
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