嫌いになれない幼馴染

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 一凛は大学へ。  徹大は美容師を目指して、美容専門学校へ。  それぞれ地元を離れ、県外の街へ一緒に行くと言うのだ。  てっちゃんがここからいなくなる。  てっちゃんが結婚する。 「瑞樹っ?」  瑞樹はもう堪えられなかった。 「ど、どうしたんだよっ」  でも、それでも、言えない。 「なんで、泣くんだ?」  さっきから徹大の顔がよく見えないと思っていたら、瑞樹は泣いていたのだ。 「て、てっちゃん」 ――好き。行かないで。 「瑞樹……」  徹大が無言で泣く瑞樹の頬に手を添える。後から後から流れる涙は、いくら指で拭っても止まらない。 「ごめ……」  すると突然、瑞樹の唇に柔らかい何かが触れた。  それは徹大の唇だった。 ――てっちゃんが俺にキスしてるっ?  あり得ない出来事に、瑞樹の涙はぴたりと止んだ。徹大の唇はすぐには離れない。瑞樹のそれをやわやわと食んだり、舌先で歯列を開けようとさえした。入り込もうとした舌に驚いた瑞樹が、勢いよく顔を離した。 「な、なにをっ……」 「やっと泣き止んだ」  徹大が意地悪そうに微笑む。 「泣き止まないから、ショック療法?」  それが瑞樹のファーストキスだった。
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