嫌いになれない幼馴染

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「瑞樹ちゃんに会いたくて、入院したのよ」 「また……」  明るい性格の杉川だが、持病が完治することはない。それを知っている瑞樹は、何と答えていいか分からず、曖昧な笑みを浮かべる。入院患者への対応はまだまだ勉強中の身だ。  バイタルチェックをする瑞樹に杉川が話しかける。 「瑞樹ちゃん、看護師さんらしくなったわねぇ」 「えー、そうですか?」 「手付きも慣れて、もう立派な看護師さんだわ」 「まだ1年目の新米ですよ」 「お姉さま方はよくしてくれる?」  看護師は女性が圧倒的に多い。瑞樹の務める病院では、別病棟に男性看護師が一名いるのみだ。杉川が言うお姉さまとは、先輩看護師のことだ。 「皆さんにすごくよくしてもらってますよ」 「そう、よかったわあ。瑞樹ちゃん可愛いから、みんな意地悪出来ないでしょうけど……」  孫を見るような眼差しで見られて、瑞樹は面映ゆい。 「瑞樹ちゃんはどうして看護師さんになろうと思ったの?」 「よく聞かれるんですけど、うち、母が看護師でそれを見て育ったからですかね」  瑞樹は看護師になろうと思った経緯を思い出す。
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