嫌いになれない幼馴染

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 瑞樹の家は母子家庭だ。父親は瑞樹が小学校に上る前に病死した。母親がもともと看護師だったため、父親が亡くなった後収入で困ることはなかった。  もともと別の土地に住んでいたが、母親の地元に引っ越してきて、徹大の隣家に居を構えたのだ。  瑞樹には三才上の姉がいる。二人の子どもを抱えて、母親は懸命に働いていた。そんな働く母の姿を見て、自然と看護師という職業に興味を持つようになった。姉の巴南(はな)も、同じく看護師だ。  徹大は公言通り、高校卒業とともに地元を離れ、美容専門学校に入学した。本命彼女の一凛も、無事志望大学に合格、徹大と同じ土地へと越していったと噂に聞いた。  もう徹大を諦めたい。  でも諦められない。  幼馴染のままでいいから、側にいたい。  高校三年生になった瑞樹は、徹大と同じ街にある看護専門学校に行きたいと母親に懇願した。 「瑞樹、あんた、てっちゃんと同じ街に行きたいだけなんじゃないの」
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