嫌いになれない幼馴染

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《第7話 思わぬ告白》  徹大と同じ高校に行くことは何も言わずに許してくれた母だが、今回はそうはいかないようだった。ずばり指摘された動機に、瑞樹は口を噤む。 「違うよ……俺、本気で看護師になりたいんだ」 「看護専門学校ならここにもあるでしょう」 「家族に金銭的な迷惑かけないようにする。奨学金もらうし、寮に入るから」  こんな理由では全く説得力がないのは瑞樹は分かっている。しかし家族に迷惑をかけないようにするとしか、瑞樹には言えない。俯いて母の反応を伺う。 「瑞樹」  瑞樹は母の問い掛けに、顔をおずおずと顔を上げる。 「そんな事を言ってるんじゃないのよ。お金の心配はしないでいいから」 「母さん……」 「てっちゃんが大好きなのは分かったから。ちゃんと看護師になるのよ、いいわね」 「うん……しっかり勉強して、母さんみたいな立派な看護師に……なる」 「泣かなくていいのよ、瑞樹」 「ごめんなさい……」  母に抱き締められるのは久しぶりの瑞樹だった。いつも何も言わずに無理を聞き入れてくれる母に、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。地元でも看護師にはなれるのに、あえて徹大の後を追う。もうきっと母親は瑞樹の徹大への気持ちに気付いていることだろう。しかしそれを問うこともしない。そんな母の懐の深さに、瑞樹は感謝の念が絶えなかった。
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