嫌いになれない幼馴染

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 徹大と会わなくなって何回目かの夜勤。帰宅ルートの終着点が潤の家になったのにも大分慣れた。合鍵もキーホルダーに収まって久しい。潤の側は気を遣わなくてよくて居心地がいい。しかしだからと言っていつまでも甘える訳にはいかない。もう一ヶ月以上お世話になっているし、そろそろ潤にも新しい彼女が出来る頃だ。  この日は世間は日曜日。  潤がいるかもと思ったが、どうやらどこかに外出しているようだ。 「潤くん、デートかな……。やばいな、起きたらネットで家探しして、ここ出て行かないと」  シャワーを浴びた後、潤の寝室に置いている敷き布団を広げ、ゴロンと横になる。夜勤明けで疲れている瑞樹は、すぐに泥のように眠りに落ちた。              瑞樹は高校卒業後、地元を離れ、徹大が住む街の看護専門学校に入学した。 ――とうとうこんなところまで追い掛けてきてしまった。  徹大は瑞樹が地元を出たことに驚いていた。しかしまさか徹大を追ってきたとは思っていないだろう。でもそれで良かった。たまに会えるだけで構わなかった。それこそ、瑞樹の持つ幼馴染特権なのだから。
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