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「瑞樹っ!」
それからクローゼットから服を投げ出し、本棚にある雑誌を全部放り投げる。徹大は美容師だ。職業柄、高価な業界誌を集めていたことは知っている。大事かもしれない雑誌だが、そんなの瑞樹の知ったことではない。それらを手当たり次第にビリビリに破いた。
「おいっ! 止めろって」
徹大が瑞樹を羽交い締めにして、その行為を止めさせようとした。女は唖然としてベッドに座り込んでいる。
「離せっ」
瑞樹は看護師だ。小柄で細身の体型だが、力仕事が多いため見た目を裏切り力が強い。徹大の拘束を振り解くのは簡単だった。瑞樹は振り向いて徹大を睨みつける。その顔は既に涙でボロボロだ。
「もう、一緒にいられない」
「瑞樹」
「てっちゃんなんか、大嫌いだっ」
瑞樹はそう言い放つと、放り出した自分のバッグを掴み、部屋を出た。せっかく帰ってきた家。夜勤明けで疲れているのに、十分もしないで再びそこを飛び出す。
外は相変わらず冷たい冬の雨。それでも瑞樹は躊躇することなく、自転車に乗る。上の階から瑞樹を呼ぶ徹大の声が聞こえる。しかしそんなのは無視だ。瑞樹は遠ざかるそれを聞きながら、懸命にペダルを漕いだ。
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