嫌いになれない幼馴染

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 潤は女性とキスする時、こんな甘い声を出すのだと、瑞樹は初めて知った。瑞樹は潤の問い掛けに答えられない。それを肯定と受け止めたのか、潤は口付けを深くする。 「あ、ん」 「可愛い声だな、瑞樹」  初めて見るエロモードの潤。兄のような彼に一度も邪な気持ちは抱いたことはない。しかし、キスで昂った気持ちは潤に不埒な思いを抱かせそうで怖かった。 「あ、もう、やめて」 「やめない。俺と付き合うというまで、やめない」  唇を合わせる水音が、静かな部屋に響き渡る。 「瑞樹、俺の恋人になるか?」  優しい潤。  きっと彼の恋人になったら、男でも女でも幸せなるのは確定だ。  だけど。 「ごめん、潤くん。やっぱり、俺、てっちゃんが好き」 「あんな、酷い男なのに?」 「うん、俺、馬鹿だよね。潤くんと付き合った方が幸せになれるって分かってるのに。でも」 「瑞樹は、俺を好きじゃないもんな」  潤が瑞樹の両頬を掌で包み込み、額を合わせる。 「ごめん、潤くん」 「いいんだ、瑞樹。おまえの本当の気持ちが知りたかったんだ」  潤が少し声を張り上げて言った。 「出てきていいぞ、徹大」
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