嫌いになれない幼馴染

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「瑞樹……」 「てっちゃんさ、今更だけど、俺がてっちゃん好きだって、知ってるだろう?」 「ああ……」 「てっちゃんが、いろんな女と寝てるのは分かってる。てっちゃんは隠すつもりもないみたいだけど」  頻繁な朝帰り。鼻をつく強い移り香。洗濯かごに脱いである徹大の服からは、封の空いたゴムの空袋や、ファッションホテルのレシートがよく見つかっていた。 「俺はいつも辛かった。てっちゃんがよその女抱いて帰ってきたと思うと、その度に心臓が止まりそうに痛かったよ」 「じゃあ、瑞樹、なんでそれを俺に言わないんだよ。瑞樹が何も言わないから……」  瑞樹は徹大の最後の発言に、思わず胸ぐらを掴む。二人の身長差は二十センチ程で、掴みかかってもまるで迫力はない。それでも瑞樹は必死だ。 「俺のせいなの? てっちゃんは俺が何も言わないから、あんな取っ替え引っ替え女と寝るの?」 「……瑞樹」 「もし言えば、女と寝ないでって言えば、てっちゃん、やめてくれた? そんな訳ないよね。だって一凛さんがヤキモチ妬いてうざいって、てっちゃん言ってたじゃないか。そんなの聞いたら、言える訳ないだろうっ」  瑞樹は徹大から手を離す。強く掴みすぎたせいで、徹大のシャツに皺が寄っている。 「男の僕が、普通に女を好きなてっちゃんと一緒に住めるだけで……幸せだったんだ。それなのに、女抱かないでなんて我儘言えると思う?」  力なく瑞樹は微笑む。
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