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「あ」
徹大はしまったという顔をする。
「徹大」
ずっと黙って話を聞いていた潤が、口を開く。
「いい加減、認めろ、徹大」
「あー……」
「俺の捨て身の告白を無駄にするな。瑞樹はおまえがどんなに酷い男でも、心が揺らがないんだぞ。おまえにはもったいない位だ」
徹大は恥ずかしそうに続ける。
「瑞樹、いなくなって、正直めちゃくちゃへこんだ。一凛と別れてもこんなこと全然なかったのに。瑞樹が俺を大嫌いって言ったのが、相当効いた。瑞樹に嫌われることなんて、絶対あり得ないって思ってたから」
瑞樹はあの日の記憶を辿る。徹大の部屋を飛び出す時、そんな言葉を吐いたような気がする。何の気無しに口から飛び出した言葉に、徹大がダメージを受けていることに驚く。
「もう、仕事は失敗ばかりだ。せっかくついてくれたお客さんも怒らせて、担当外れるし。店長にはやる気がないなら辞めろって言われるし。最悪のコンディションだよ」
徹大が瑞樹に告げる。
「瑞樹、好きだ。戻ってきてくれ」
この言葉をもらった瞬間、瑞樹は今死んでも構わないと思った。
だけど。
「やだ、俺、帰らない」
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