嫌いになれない幼馴染

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「潤くん、泊めて……」 「徹大と喧嘩したのか?」 「詳しく言わないと、泊めてくれない?」 「それはないが、それより早く上がれ、風邪ひくぞ」  瑞樹が逃げ込んだ先は、高校の先輩、平橋潤(ひらはしじゅん)の家。潤は徹大の高校時代からの親友。瑞樹は徹大の後を追いかけて同じ高校に入学した。それが縁で瑞樹は潤とも仲良くなった。 「シャワーしてこい、瑞樹。寒いだろ」 「うん」  潤に促され、脱衣所に行く。  羽織っていた黒のダウンジャケットも、履いていたジーンズもしっとり濡れている。アウターの下に着ていたブラウスは濡れずに無事だった。  それらを脱ぎ捨て、風呂場に入る。残念ながら湯船にお湯は張っていないが、他人の家なので文句は言えない。  シャワーから思いっきり熱い湯を出す。それに打たれると雨の冷たさがじんわりと抜けていくようだ。温かいお湯を浴びて少し気持ちが落ち着いた。すると先ほど目に入った場面が脳裏に浮かび上がる。 ――てっちゃん、うちに女連れこんでたなあ……。
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