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《第10話 繋がる気持ち》
一体どこへ向かうのか。
久しぶりに触れる徹大の体。
もっと触れていたかったが、バイクは思いの外早く目的地に到着したようだ。
「ここ?」
今二人が住むマンションからそれ程離れていない場所。そこは別のマンションの駐輪場だった。
「てっちゃん!」
徹大は何も言わずにマンション入り口に向かって歩き出す。
「てっちゃん、何? ここ、何なのさ」
瑞樹が話し掛けても、徹大は何も言わない。
――やっぱり怒ってる……。
瑞樹は俯いて立ち止まってしまった。
「あっ」
なかなか歩みを進めない瑞樹に焦れたであろう徹大が戻ってきて、瑞樹の手を握る。
「いいから来い」
手を繋がれ、引っ張られる。触れる手の感触に瑞樹はドキドキする。キスだってしてるのに、未だに瑞樹は徹大に触れられることに慣れない。
言葉は乱暴なのに、引く手の力は優しい。
引かれるまま、エレベーターに乗り込む。着いた階は四階。外廊下の突き当たりの部屋。徹大がポケットから鍵を取り出し、施錠を解く。
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