嫌いになれない幼馴染

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 玄関ドアを開くと、中はがらんとして何もない。 「暗いなあ……。電気、電気」  徹大の手はいつの間にか外れていて、瑞樹はそれを寂しく思う。徹大は先に家に上がり、中へと進む。廊下、リビングに急に灯りが灯る。当然リビングにも何もない。 「瑞樹、ここに引っ越すから」 「え?」 「もう契約したからな、嫌とは言わせないぞ」  突然のことに瑞樹は思考が追いつかない。 「な、なんで」 「瑞樹が言ったんだからな。もうあそこには戻らないって。引っ越さないと帰らないって」 「だけど」  まさか、徹大があんな嫌がらせのような願いを叶えてくれるなんて、思いも寄らなかった。 「後な、スマホ」  徹大がポケットから出したそれは、新品だった。 「前のは解約して、番号も新しくした」 「嘘」 「嘘じゃない。連絡先も引き継いでないから、今入ってるのは瑞樹と、仕事関係だけだ。女の子の連絡先は捨てたから」  徹大が瑞樹にスマホを手渡す。 「一応パスワードついてるけど、瑞樹には伝えとく。抜き打ち検査してもいいぞ」  瑞樹はスマホを手にして動けない。 「瑞樹」  呼び掛けに瑞樹は反応出来ない。 「好きだ、瑞樹」
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