嫌いになれない幼馴染

　これは現実だろうか。

「今まで本当ごめん。何にも言わないおまえに甘えてた。瑞樹、今まで一度も我儘とか言ったことないよな。あれって、俺が言わせなかったんだよな。潤に甘えてる瑞樹を見て、そう思った」

　確かに瑞樹は潤には甘えている。その自覚は瑞樹にもある。

「だから、初めて瑞樹が俺に言ってくれた我儘を、叶えてやりたかった」
「わ、我儘？」
「違うのか？」
「わ、分かんない……」

　瑞樹は展開についていけない。

「俺、もう、てっちゃんに、嫌われたって思ってたから」
「何でだよ」
「だって、女の子と会わないでとか、引っ越さないと帰らないとか、スマホ壊してとか。嫌がらせじゃん」
「そうか？　一凛はもっと凄かったけど」

　ここで元カノの名前を出す辺りが徹大らしい。

「てっちゃん、分かってる？　俺、男って」
「おい、今更か？」
「だって！　てっちゃん、相当の女好きだよ？　男の俺で満足なんか、出来っこないっ」
「決めつけんな」
「きっとまた浮気する」
「だから、しないって」

　瑞樹の一度頑なになった心は、徹大の渾身であろう告白にも閉ざされたままだ。