鈍感な幼馴染

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 幼馴染で同居人でもある瑞樹が夜勤で不在だった昨夜、徹大は知り合いの女を飲みに誘った。  以前合コンで出会った女子大生。  茶色の長い髪が色っぽくて、顔もスタイルもかなりイケている。  連絡したら案の定すぐ出てきた。  彼女は徹大のセフレでもある。  だがこの日は彼女と寝るつもりはまるでなかった。  ただ酒を飲んで楽しくお喋りしたかっただけ。  だったら男友達と行けば良かったと後悔してもそれは後の祭りだった。 「てっちゃんなんか、大嫌いだっ」  女と裸で同衾している徹大を見た瑞樹は、捨て台詞を吐いて家を飛び出した。 「瑞樹!」  徹大はすぐに追いかけようとしたが、あいにく下着しか身に付けていない。  冬の朝、上半身裸で外に出る気合もなく、そこらに散らばっていたスウェットの上下を慌てて身に付ける。  すぐに玄関を飛び出し、外廊下からマンション下を見下ろす。  ちょうど真下が駐輪場で、瑞樹が愛用のチャリに跨ろうとする姿が目に飛び込む。 「瑞樹っ、行くな!」  上から思い切り叫ぶが、瑞樹に届いているのかいないのか。  素知らぬ振りでペダルを漕ぎ出し、降りしきる雨の中、瑞樹は走り去ってしまう。
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