鈍感な幼馴染

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「瑞樹!」  遠ざかる瑞樹に負け惜しみの如く声を張り上げる。  しかし、もうその声は届かないだろう。 「瑞樹……」  徹大はしばらく外廊下に佇む。  瑞樹が誤解しても仕方がない状況だったが、もう少し話を聞いてくれてもいいのではないかと思ったりもする。  ――てっちゃんなんか、大嫌いだっ。  瑞樹は一つ年下の幼馴染。小学生の時、隣人として出会い、もう十五年の付き合いだ。  幼い頃から徹大の後ろをてっちゃん、てっちゃんと懐いて付いてくる瑞樹が可愛いかった。  徹大を崇拝するがごとく懐く瑞樹は、今まで一度たりとも徹大に刃向かうことはなかった。  そんな瑞樹から初めて受けた拒絶の言葉に、徹大はかなりショックを受けていた。  徹大の吐く息が白い。  雨が降っているから寒さ倍増だ。  こんな雨の中、瑞樹は躊躇することなく家を飛び出していった。  夜勤明けなのに酷いことをしたと徹大はようやく気付く。  色んな意味で落ち込んで、仕方なく家の中に戻る。  自分の部屋に入ると、瑞樹にめちゃくちゃにされた風景の中、女が既に着替えてベッドに腰掛けている。
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