鈍感な幼馴染

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「おかえり」 「おかえりじゃねぇよ。なんでおまえ、あんな嘘、瑞樹に言うんだよっ。俺が家でヤらねぇの、知ってるくせに」 「あはっ、嫌がらせ?」 「はあ?」  女が手遊びしていたタバコに火を付けようとする。それを咄嗟に徹大が奪う。 「うちは禁煙だ」 「そうなの?」  瑞樹は幼い頃から喘息持ちだ。  大人になった今はだいぶ丈夫にはなっているが、用心することに越したことはない。  ちなみに徹大は煙草は吸わない。 「で、なんで嫌がらせ?」 「だって、あんな可愛い恋人いるなんて、あたし、知らなかったし」 「瑞樹は恋人じゃねえよ。幼馴染でルームメイトで、第一、男だ」 「その割には必死で言い訳しようとしたり、追いかけたりして。徹大があんな取り乱すの、初めて見ちゃった」 「うるせぇ」  徹大は諦めたように、女の隣に腰を下ろす。 「あんたの言う通り、昨日はヤッてないよ、あたしたち。でもさぁ、それ認めんのも、悔しいから、つい、ね」 「なんだよ、それ。訳分かんねぇ」 「女心が分からん男だなぁ。あんたを好きだからだってば」 「マジ……? 俺ら、セフレじゃなかった?」 「そう言わないと、あんた、 会ってくれないじゃん」 「マジかぁ……」 「あはは、もう諦めるから安心しなよ。何ならあたしがあの可愛い彼氏に言い訳の口添えしてやろうか?」
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