鈍感な幼馴染

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 親同士が頭の上で会話する中、徹大と瑞樹は見つめ合う。 「徹大くん、仲良くしてね」  にっこり微笑む瑞樹は、まるで天使のようだった。 「おう」  徹大は可愛い弟が出来たようで嬉しかったことを思い出す。  いつの間にか瑞樹は徹大を「てっちゃん」と呼ぶようになり、徹大が同級生と放課後遊ぶ時は、懸命に自転車で追いかけてきた。 「どこ行くの、てっちゃん。僕も連れてって」 「野球するけど、おまえ出来んのか」 「したことないけど、やってみる」  可愛い瑞樹に徹大の友人たちも優しく接してくれた。  そのおかげで瑞樹は大人しいなりに、それなりに外で活発に遊べるようになった。  しかしどんなに徹大の友人たちが瑞樹に優しくしても、瑞樹は徹大だけを崇拝した。 「てっちゃん、すごい! ホームランだ」 「かっこいいなあ、てっちゃん」 「てっちゃんが一番野球が上手だ」  瑞樹が徹大だけを慕うことに、徹大は密かに優越感を感じていた。  それを逆手にとってちょっと意地悪もした。  わざと瑞樹と遊ばないのだ。  自転車で追いかけてきても、置いていったりする。  その時の切なそうな顔を見ると、徹大は背筋がぞくぞくした。  この癖はずっと続いて今に至る。  悪趣味なこと、この上ない。
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