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《第2話 側にいさせて》
「遅かったな、瑞樹」
「シャワー浴びすぎて、逆上せた」
「逆上せる程シャワー浴びるなよ、馬鹿だな」
「うん……」
長風呂からようやく出てきた瑞樹は、潤が用意してくれた部屋着に着替えていた。
「ほら、水飲め」
ペットボトルを渡され、ソファに座り飲み干す。バスタオルを奪われ、後ろから濡れた髪を潤が拭いてくれる。
「潤くんは優しいなあ」
「お世辞言っても何も出ないぞ」
徹大と潤は親友だ。チャラ男の徹大とは違い、潤は真面目で寡黙。三年間同級生であること以外共通点のない二人が、どうして親友なのか。瑞樹には全く分からない。
「ほら、乾いた。瑞樹、とりあえず寝ろ。おまえ夜勤明けだろ」
「眠くないもん」
「横になったら自然と眠くなる」
「だったら潤くんも一緒に来てよ」
二十二歳にもなって、一つしか違わない潤に甘えるのは正直変だと瑞樹は分かっている。ただ徹大に切り裂かれた心は、誰かに甘えないと修繕すら難しい。
「分かったよ」
潤は本当に優しい。瑞樹が徹大に言えない我儘でも、潤には言える。
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