鈍感な幼馴染

13/62
前へ
/260ページ
次へ
「お客様の仰る通りです。今回はもちろんお代はいただきません。それでご勘弁願えませんか?」 「当然よ、誰がこんなことされてお金を払うものですか。それと、次回からは担当を変えてもらうわよ。ちょっと顔がいいからって、調子に乗ってるんじゃないわよ」  徹大にとっては酷い言われようだが、自分が悪いのだから仕方がない。 「はい。本当に申し訳ありませんでした」  再び徹大は深く頭を下げた。  立腹していた客は言いたい放題に言い尽くすと、気が収まったのか、やっと店を出て行った。 「はあ……」  徹大は思わずスタッフルームで溜息をつく。 「今和泉くん、最近何かあった?」 「ユカさん」  徹大に声をかけたのは、先輩美容師のユカだ。  遅い昼食を食べようとしていた徹大だが、あまり食も進んでいない。  どうやらそれもユカの目に入ったようだ。 「ご飯もあんまり食べてないみたいだし」 「はあ……すみません」 「今日のも、まあミスといえばミスだけど、あんなに怒らなくてもって思うけどね」  ユカはくすりと笑う。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1649人が本棚に入れています
本棚に追加