鈍感な幼馴染

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「君らしくないよね、なんでも卒なくこなすのに」 「いや、そんなことないですよ」 「何か悩みがあるなら、聞くよ」  その目は徹大を誘っている。  ――今は気分的に乗らねえ……。 「ははっ、そん時はよろしくお願いしますっ」  チャラ男を装い、断るようでそうでない返事をする。  その内容に満足したのか、ユカは上機嫌でスタッフルームを出て行った。 「慰めにきてくれたのか、誘いにきたのか、分かんねぇじゃん」  徹大は自嘲気味に呟く。  確かに徹大は仕事上の失敗が続いている。  カラーの調合を間違えたり、予約の電話で日時を間違えて受けたり、備品の発注を間違えたり、など。  あり得ない失敗ばかりだ。  簡易テーブルに置かれたコンビニ弁当。  瑞樹がいる時は、あまりにも食生活に無頓着な彼のためによく弁当を作ってやっていた。  その時自分の分も一緒に詰める。  しかし瑞樹のいない今、自分のためだけに弁当を作る気はまるで起きない。 「はあ……美味しくねぇし……」  弁当は半分も食べないで、徹大は蓋をしてしまった。
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