鈍感な幼馴染

16/62
前へ
/260ページ
次へ
 瑞樹は徹大と休みを合わせていた。  そして休日前夜は二人で映画を見ることが多かった。          ビールやお菓子を並べ、部屋を暗くして、ソファーに並んで座る。  まるで恋人同士の週末の過ごし方だ。  それなのに瑞樹はその意味を全く分かっていない。  正直徹大は映画はどうでもよかった。  ビール片手に真剣に画面を見つめている瑞樹が可愛い。  それを肴にビールを飲むのが楽しかった。  二人ともアルコールは飲めるが、徹大はあまり強くない。  ビール二本で酔っ払ってしまう。それに反して瑞樹は笊で、何本飲んでもけろりとしている。  いつも先に酔う徹大は、その勢いで瑞樹にキスをする。 「瑞樹」 「な、なに」  変な雰囲気を察知した瑞樹が体を固くする。  もっと酒に弱ければ、酔いを理由に甘えられるだろうにと思う。 「キスだ、キス、来い」 「やだ」  キスを恥じらう成人男性なんてキモいだけなのに、どうしてだか瑞樹は可愛くしか見えない。  女だってこんな恥じらったりしない。  瑞樹は希少な大和撫子だ。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1649人が本棚に入れています
本棚に追加