鈍感な幼馴染

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「待たせて悪い」 「いいよ、先に飲んでたから」  瑞樹が家を出て半月が過ぎた。  徹大は瑞樹の現状が知りたくて、潤を飲みに誘った。  誘ったのは徹大だが、未だに細かい失敗が続いて仕事が捌けない。  店を出るのが遅くなり、待ち合わせの時間に遅刻してしまう。  安い居酒屋。二十代前半の男二人で飲むのは、こんな店がちょうどいい。  徹大のビールが来たところで軽くグラスを合わせる。  一口飲むとやっと一日が終わったと思える。そんな徹大を潤がじっと見つめていた。 「何だよ」  視線に気付いた徹大が、潤に問いかける。  凛々しい顔立ちの潤だが、ふとした表情が甘く、それがどうやら女心を擽るらしい。  徹大は潤に邪な気持ちなどこれっぽちも起きないが、女にモテるのは分かる。 「反省したか?」 「何をだよ」 「瑞樹を長い間、弄んでること」  この親友はどこまで徹大と瑞樹のことを知っているのだろうか。 「瑞樹はおまえを好きだよ、徹大」 「知ってる」 「でもな、あいつ、本気でおまえと別れる、って言い方が正しいか分からないが、おまえと決別するつもりだよ」
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