1649人が本棚に入れています
本棚に追加
潤が知ったかぶったようなことを言うのを徹大は黙って聞く。
「もうしばらく瑞樹は俺が預かっといてやるから、徹大、おまえはもっと考えろ」
「考える?」
「瑞樹とどうなりたいのか」
――瑞樹と、どうなりたいか。
それから潤と酒を飲み、しばらくして別れた。
潤は今から瑞樹が待つ家に帰るというのに、徹大が無人の家に帰るのは、腑に落ちない。
瑞樹に操なんか立てたくない。
そんな思いでスマホからすぐ会えそうな女に連絡を取る。
その女は一人暮らしで、今から来てもいいと言う。
徹大は瑞樹への罪悪感は見ない振りをして、その夜、女を抱いた。
徹大が瑞樹の気持ちに気付いたのは、中学生の時だ。
瑞樹の熱い視線からは、言葉はなくとも徹大への恋心が溢れまくっていた。
気付かれていないと思っている瑞樹が可愛くて、わざと目の前で他の女の話なんかをする。
瑞樹は途端に悲しそうな顔をするが懸命に堪えていた。
徹大と同じ高校を志望していると母親から聞いた時は驚いた。
瑞樹は徹大と違い、真面目な優等生で、県内一の進学校を狙える程の成績の持ち主だった。
最初のコメントを投稿しよう!