1649人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーそんなに俺が好きなのか?
瑞樹は、家から近いから徹大と同じ学校にすると言い張る。
ここまで健気に思われて、徹大は呆れるしかなかった。
徹大は特定の彼女がいた時期もあるが、あまり長続きはしなかった。
彼女を持つと、その相手が独占欲で嫉妬深くなるのが、非常に面倒なのだ。
その点、瑞樹は何も言わない。
徹大を好きな癖に、どんなに女と遊んでも文句一つ言いやしない。
瑞樹は男であることを除けば、徹大にとって理想の恋人であることは間違いなかった。
そんな徹大は高校三年生の時、初めて恋に落ちた。
相手は近所の女子校に通う、津野田一凛(つのだいちか)。
彼女はこの小さな町では有名な美少女だった。
腰まである黒髪、小さい顔、大きな瞳、小薔薇のように赤い唇、透けるように白い肌。
日本人形のような美しさの中に、淫靡な色気を漂わせている。
徹大は一目惚れだった。
今まで女子から言い寄られるばかりで口説いたことのない徹大が、懸命に口説き落としてようやく一凛と恋人同士になれた。
徹大は一凛に夢中になった。
その時は瑞樹は全く眼中になくほったらかしだった。
今思えば相当寂しい思いをしていたと思う。
その間、潤に懐いたのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!