鈍感な幼馴染

26/62
前へ
/260ページ
次へ
 ーーそんなに俺が好きなのか?  瑞樹は、家から近いから徹大と同じ学校にすると言い張る。  ここまで健気に思われて、徹大は呆れるしかなかった。  徹大は特定の彼女がいた時期もあるが、あまり長続きはしなかった。  彼女を持つと、その相手が独占欲で嫉妬深くなるのが、非常に面倒なのだ。  その点、瑞樹は何も言わない。  徹大を好きな癖に、どんなに女と遊んでも文句一つ言いやしない。  瑞樹は男であることを除けば、徹大にとって理想の恋人であることは間違いなかった。  そんな徹大は高校三年生の時、初めて恋に落ちた。  相手は近所の女子校に通う、津野田一凛(つのだいちか)。  彼女はこの小さな町では有名な美少女だった。  腰まである黒髪、小さい顔、大きな瞳、小薔薇のように赤い唇、透けるように白い肌。  日本人形のような美しさの中に、淫靡な色気を漂わせている。  徹大は一目惚れだった。  今まで女子から言い寄られるばかりで口説いたことのない徹大が、懸命に口説き落としてようやく一凛と恋人同士になれた。  徹大は一凛に夢中になった。  その時は瑞樹は全く眼中になくほったらかしだった。  今思えば相当寂しい思いをしていたと思う。  その間、潤に懐いたのかもしれない。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1649人が本棚に入れています
本棚に追加