鈍感な幼馴染

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「あいつも寮だったよなあ」  ダメ元の、軽い気持ちで声をかけた。  すると瑞樹は一も二もなくルームシェアを引き受けてくれた。 「おばさんに相談しなくていいのか?」 「いい。俺、もう寮を出るつもりだったから」  一凛と住むはずだった部屋で瑞樹と暮らすようになったのは、今から二年前のことだった。 「俺、瑞樹がいないと、だめだ」 「やっと気付いたか」  日曜日、珍しく休みをもらっていた徹大は潤に電話をかける。 「ああ、でももう遅いかな」 「どうかな。瑞樹、今までになく頑なだからな」 「だよな」  謝って許してもらえるなら、帰ってきて欲しい。  そしてまた一緒に暮らしたい。  瑞樹を好きだと言いたい。 「やっと気付いたおまえのために、俺が一肌脱いでやる」 「え?」  この日、瑞樹は夜勤明けで午前中に帰宅する。  それから夕方まで寝るだろう。  寝ていることを確認したら電話するから、うちへ来いと潤は言う。
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