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しかし、その直後、突如、笑い声が響き渡る。
(な…なんだ、この笑い声は??)
それは明らかに外部から響く声だ。
それと同時に、もう1つの声が聞こえてくる。
「ちょっと、水樹【みずき】…それは流石に悪趣味よ?」
この声は八尋さんの声…。
て…事は、つまり……?
俺は後ろを振り返り、そして状況を理解した。
大爆笑している八尋さんの友人。
八尋さんが、呼んだ名前は彼女のモノだったのだと。
そして俺は更に1つ理解する事になる。
水樹と呼ばれた八尋さんの友人は、腹を抱えて笑いつつ不意に俺の右肩を叩き…。
耳元に囁く。
「お兄さん単純過ぎるね?」
(な……?
ま…まさか俺が心の声だと思っていたものは……?
だっ…騙された!!)
俺は虚ろな瞳で水樹と呼ばれた八尋さんの友人の方を見据えた。
こんなに簡単に騙されるなど、実に情けない話である。
(俺って、こんなに単純だったのか??)
ショックの余りに俺は思わず、溜息をつく。
だが、その直後の事である。
項垂れる俺の目前に、綺麗な褐色の右手が差し出される。
(えっ…?)
俺は状況を理解する為に、頭を上げた。
差し出されしは八尋さんの艶やかな褐色の手。
俺はその手を不思議そうに見詰める。
そうした理由は、彼女が何故、手を差し伸べてくれたのかが、理解出来なかったからである。
だが、それを理解出来なかったのは情けない話だが俺が、こういった状況に不慣れだったからだ。
「友人の水樹が失礼をして済まなかった。
取り敢えず、立ちたまえ。」
「え……あぁ……?
有り難う……。」
俺は取り敢えず、八尋さんの手を掴み立ち上がる。
「八尋、あんたも物好きよね?
別に付き合うとか、そう言う話じゃないんだし、こんなモテない君なんてほっとけばいいじゃん?
第一、あんたはモテモテなんだからワザワザ、こんな冴えないのを気にかけたら駄目よ?」
(酷い、言われようだ……。
この水樹って女、絶対に俺の事、人間扱いしてないよな……?)
俺は余りの無慈悲さに気圧されながら、呆然と立ち尽くす。
だが、そんな時だ。
八尋さんから意外な一言が、放たれる。
「もう六年もの付き合いだと言うのに、私の事を全然、分かってないな水樹?
今まで私に告白して迫ってきた彼等がどうなったか、忘れてはいないだろ?」
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