報告二 童貞刑事と美貌の上司

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 穂積がウンザリとため息を吐いて、井上を振り返る。 「ほらやっぱり、俺の言ったとおりでしょう? 二日も北荒間でウロウロしてたら、絶対に彼らに気づかれるって」 「……マジで、なんでバレるんすかね」  井上は、直属の上司の穂積に頭が上がらないようだった。捜査一課で、散々こき使われているせいだろう。  桂奈は姿勢を直し、傾いた看板を直しながら、二人に訊ねる。 「どうしたんですか? お二人でこんなところに。一応聞きますけど、遊びに来たんじゃないですよね? それなら、見なかったフリして帰りますけど」  いつものお返し、とばかりに嫌みを言ってやる。それは井上ではなく、穂積に向けたものだった。  穂積はすぐに気づいて、不機嫌そうな顔をさらに歪めた。  桂奈は少しだけ気分が良くなった。 「遊びに来たんじゃないなら、北荒間にどんな用事ですか? なんにしても、うちの目と鼻の先の北荒間にいるのに、私たちに声かけてくれないなんて、水臭いじゃないですか、井上さん」  調子に乗った桂奈は、今度は井上に鎌をかけた。  井上が気まずそうに桂奈を見る。それだけで桂奈は、自分の予想が当たったと確信した。  井上たちは、彼らが抱える事件の捜査で北荒間に来ている。 「井上さんの班、先週C山中で見つかった、男性のバラバラ遺体の事件、調べてるんですよね?」  加恋から井上の目撃情報を得た後、署に戻って早速調べた。井上たちが捜査している事件を。  井上が小さく舌打ちする。 「相変わらず、怖ぇぐらい耳が早いな。その遺体の身元が割れて、M市内の不動産会社の社員だってわかったんだ。で……」  桂奈ちゃん、口堅いよな? 意外と慎重な井上が念押しで訊くので、桂奈は安心させるように大きく頷いた。 「それでその不動産会社調べてったら……そこの経営者一族の関係者が、何人か行方不明になってんだよ」 「え、それって……」 「どうも……連続殺人じゃないかって、俺は睨んでる」  桂奈は息を呑んだ。連続殺人とは――穏やかではない。  井上の話を黙って聞いていた穂積が、呆れ顔で腕組みをする。 「まだなんの証拠も出てないし、そもそもその関係者たちが死亡してるかもわからないのに……井上さん、飛ばしすぎですよ」 「だ、だから! その証拠探しのために北荒間まで来たんじゃないっすか!」  桂奈は井上の言葉に首を傾げた。井上が、桂奈に続きを語る。
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