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昭和の臭いが拭えない、安普請のラブホテル。狭い室内は、ほとんどベッドで占領されていた。
その大きいだけのベッドが、ギシッと軋んだ。
「だ、ダメです……管理官……」
古くて硬いベッドに、大輔が押し倒されている。
穂積に――。
大輔に馬乗りになった穂積は、弱々しく抵抗する大輔を嬉しそうに見下ろし、所轄署ではまず見かけない高価なジャケットを脱ぎ始めた。
「こんなこと……俺には、晃司さんが……」
大輔の抵抗はひどく弱い。ダメだと繰り返しながら、ゆっくりと焦らすように服を脱ぐ穂積から、目を離せないでいる。
穂積は無言で微笑みながら、ジャケットを床に落とした。
「……先輩には、絶対に内緒にするよ?」
「そういうことじゃ……俺、晃司さんを裏切れません……」
大輔は今にも泣き出しそうだった。きれいな目に涙が滲んでいる。
それは、最愛の恋人を思って浮かんだ悲しみの涙にも見えるし、目の前の憧れの男に欲情し、熱に浮かされているようにも見えた――。
いずれにせよ、その目は穂積を煽るだけだろう。
穂積の薄茶の瞳が、妖しく燃える。
「じゃあ……こういう風にしたら?」
穂積は上品なストライプのネクタイを外し、首元から引き抜いた。そして動けないでいる大輔の両手を掴むと、そのネクタイで大輔の両手首をまとめて縛った。
「管理官?!」
「こうすれば、大輔くんは俺に襲われたことになるよ? それなら、大輔くんは悪くないでしょ?」
とんでもない悪巧みを、穂積は可愛いイタズラのように言いのけた。
「これで、大輔くんはもう逃げられない」
「管理官!」
穂積は、しばった大輔の両手を大輔の頭上に押さえつけた。
そしてそのまま上体を倒し、大輔に顔を近づけ――キスをした。
「……か、かお、るさ……んんっ」
最後の抵抗をする大輔に、穂積は容赦しなかった。
やっと捕まえた獲物を逃がすものかと、キスは最初から飛ばした。
乾いてサラサラして気持ちよい唇を、強く吸う。想像した通り大輔の体は敏感で、それだけでビクッと震えた。
しかし大輔も中々強情で、穂積が舌を差し入れると両手が暴れた。穂積はその手を強く押さえ込み、大輔に乗せた体の全身を使って、大輔の動きを封じる。
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