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穂積が――笑った。
穂積のふいの笑顔に、桂奈は不覚にもときめいた。
「あれ? そんなに笑います? 俺、小野寺ほど、お笑い要員じゃないと思うんすけど。顔だって、俺の方がイケてるっしょ?」
またふざけたことを、井上は大真面目で言った。穂積がとうとう声を立てて笑い出す。
「イケてるっていうか……井上さん、顔、濃すぎ。この前本部に視察に来た警察庁(さつちょう)のお偉いさんが、俺と井上さんの二人を指して、警察にハーフが増えるのは問題だ、てボヤいてましたよ」
桂奈は思わず噴き出した。確かに井上は、ハーフと言われれば信じられるほど、顔が濃い。
「マジっすか?! 両親どっちも北関東出身なんですけどねぇ」
井上はからかわれているのに、あっけらかんと笑い飛ばした。
その様子に、穂積は薄茶の目を丸くし、また楽しそうに笑った。
桂奈は不思議な光景に、しばらく言葉を失った。
穂積と井上が、軽口を叩きながら笑い合っている。上司と部下の関係だが、年は近いせいか、意外にも気が合うらしい。
(……あら?)
桂奈は――逸る胸が苦しかった。
穂積が井上に嫌みを言うが、鷹揚な井上は気にせず受け流す。流されても、穂積は呆れるだけで怒った風ではなかった。
むしろ、嬉しそうで――?
(あららららら?)
桂奈の目が、輝き出す。
まさか――こんなカプがあったとは!
(クールで冷たい美貌の鬼上司が、笑うと幼くなっちゃうなんて! だらしなくて一見ダメ刑事っぽいけど、実は切れ者の部下なんて!)
ダメと見せかけて切れ者部下×冷たいと見せかけて笑顔が可愛い上司。
(あると思います!)
桂奈は胸の内でガッツポーズした。
ふと、携帯のバイブ音が響く。
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