報告三 ワイルド刑事と童貞刑事と美貌の上司

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「……古谷巡査長、仕事をしてください」  恐るべき、捜査一課管理官である。桂奈の邪な考えはあっさり見抜かれていた。 「は、はい」  桂奈は怖くなって、仕事に戻った。ボーイ兼店長の元に近づく。 「店長! これはなにごと?! 穏やかじゃないわねぇ」  口髭の老齢店長は、昨年まで北荒間風俗組合の組合長を務めていた。今年になって、ちぇりーはんとの店長に組合長を譲った後も、北荒間でも最古参の店とあって、北荒間や組合に今でも顔が利く。  当然、荒間署生活安全課とも知らない仲ではなかった。  その年老いた店長が、言い訳を探しているのか慌てふためく。 「桂奈さん、これは……いや、違うんですよ。これはね、こっちが被害者で……」 「はぁ? 裸の男性を正座させといて、被害者?!」  桂奈は店長に凄みながら、シュウイチを振り返った。井上が自分のジャケットをシュウイチに渡し、シュウイチは恐縮しながらジャケットを肩に羽織った。  メガネのナオヤは、ダサいメガネの奥の黒目がちの目を潤ませ、シュウイチをジッと見つめていた。  それは、健気に――。 (あら~)  桂奈の頬がわずかに緩む。  と、冷たい視線を感じ――ハッとする。穂積が、桂奈を睨んでいる。 「ちょっと整理させてください。えっと……君たちは、ここに遊びにきたの?」  桂奈は真面目な警官の顔を作って、シュウイチとナオヤに訊ねた。 「え?! は、はい……」 「お巡りさん! この店、ボッタクリなんです!」  シュウイチが歯切れ悪そうに答え、ナオヤが憤懣やるかたない様子で訴えた。 「六十分で五万五千円なんて、高すぎますよね?!」 「ご、五万?!」 「たっけぇ……」  ナオヤの訴えに、桂奈は耳を疑った。シュウイチに付き添う井上も、低い声で驚いた。穂積が、呆れたようなため息を吐いたのが聞こえた。  桂奈は目を眇め、店長を振り返った。
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