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「店長……この店、いつから吉原ばりの高級店になったわけ? しかも、このボロい店構えで」
「あ、いやぁ……」
「そんな値段払えないって言ったら、払うまで帰らせないって!」
ナオヤが次々と老舗ソープ店のボッタクリを暴露していく。
桂奈は顔馴染みの店長を、しばらく無言で睨んだ。
この店は、そんなヤクザな商売をする店ではなかったのだが――。
「その料金は適正と思えないけど……料金の説明はプレイ前にちゃんと受けたんですよね? てゆうか、二人とも、プレイはしたんですか?」
事態を正確に把握するため、桂奈は被害を訴えるシュウイチとナオヤに質問した。
シュウイチとナオヤは、揃って顔を赤くし、口ごもった。
「桂奈ちゃん……俺が、代わろうか?」
恥ずかしそうに俯く若者二人を見かねた井上が、助け船を出す。
ソープにやって来た若い男たちは、女性の警察官にプレイしたのか、などと質問されるのが恥ずかしかったらしい。
北荒間の客層は、サラリーマン以上の中年男性が多い。そのせいか、北荒間の客の男と話すことがあっても、いつも桂奈の方がセクハラされて、不愉快な思いをするばかりだった。
若い男の可愛らしい反応に、桂奈は照れくさくも嬉しくなった。
(若いって……いいわぁ)
毎日スケベ面のオヤジたちばかり相手にしているので、しみじみとそんなことを感じた。
「……こういう店って、基本前払いだろ? つうことは、あんたら遊ぶ前に料金で揉めて、身ぐるみ剥がされたのか? それなら店長さん、立派な脅迫、または傷害になっちゃうけど?」
桂奈に代わった井上が、サラッと恐ろしいことを言い出し、老年店長が真っ青になる。
「ちょちょっと、待ってください! こいつらが裸なのは、入浴料払って、部屋に行ったからですよ! あたしが裸にしたんじゃないですからね!」
「はぁ? 金、もう払ってんのか? しかも部屋まで行ってるって……」
わっかんねぇな、と井上が頭を捻った。若者たちには気の毒だが、再び桂奈が質問する。
「受付で先に入浴料を払ったんですね? その金額は、二人とも納得できるものだった。それで部屋に行ったけど……」
「んん? 桂奈ちゃん、ちょっとタンマ。金の支払いどうなってんだ?」
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