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井上に質問を遮られ、桂奈はムッと顔を歪めた。
井上はスケベ、遊び人を装っているが、やはりそれは仮面だった。ソープのシステムも知らないとは、風俗遊びもほとんどしたことがないのだろう。
桂奈は腰に手を当て、ハァと息を吐いてから説明した。
「大抵のソープは、入浴料とサービス料を別々に払うんです。お店によっては、合わせて受付で支払うこともありますけど、この店では受付で事前に入浴料を払って、嬢にサービス料を払うシステムになってるんです。だから、彼らは受付で店長に提示された入浴料を支払い、部屋に入って嬢に支払うサービス料のことで揉めた……てとこでしょう?」
桂奈は少し怒って若者たちを振り返った。
呆気にとられていた裸の青年たちは、慌てて何度か頷いた。
へぇ、と井上が納得し、さすがですね、と穂積も感心した。
桂奈は、なんとも言えない気分になった。
五人の男の前で、どうして女性の自分が、ソープのシステムについて語らなくてはならないのか――。
「にしても……なんで二人揃って裸? 別々に部屋に行ったんですよね?」
風俗に詳しい桂奈でも、目の前の光景は謎が多かった。改めてシュウイチとナオヤに訊ねると、二人はまた黙ってしまった。
彼らに詰問するのも気の毒で、桂奈は店長に向き直った。
「店長、なにがあったか最初から教えてもらえる?」
「え? ええ、ええ」
店長は、摘発されてはかなわないと焦ったのだろう、いつもより早口で語り出した。
「いやね、お恥ずかしい話なんですけど、うちも経営が厳しいでしょ? 最近はこんな早い時間、嬢を一人しか置いてなかったんですよ。そこにお客さんが二人も来て……知り合い同士だし、二人まとめて……まぁいわゆる……」
逆3P――ですな、と店長はなぜか声を潜めた。
「……逆?」
井上が、嬉しそうに訊き返す。妻一筋だが、スケベ心は人並みなのか、興味を抑えられなかったらしい。
「普通、風俗で3Pって言ったら、女の子が二人に決まってるじゃないですか。井上さん、男二人で……例えば小野寺さんと3Pしたいですか?」
「……うっゲェ……桂奈ちゃん、怖ろしいこと言うなよ……」
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