報告三 ワイルド刑事と童貞刑事と美貌の上司

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 幸代は、今時あまり見ない、光沢素材の短いスリップドレスを着ていた。たるんだ腕や太ももが丸見えで、かなり下がった胸の位置もはっきりと確認できる。 「幸代さん……嬢に、復帰したんですか?」  以前どこかで、幸代が北荒間のソープ嬢だったと聞いたことがある。かなりの売れっ子だったとも聞いたが、それは四半世紀――半世紀近く前の話だ。  幸代は孫もいて、七十過ぎのはずだった。  幸代はタバコをふかしながら、面倒臭そうに答えた。 「下の娘の孫がね、大学に行きたいって言い出したのよ。女なんだけどさ、頭のいい子でね。でも娘は、離婚して一人で孫を育ててそんな余裕ないわけ。だから、あたしがひと肌脱いでやろうと思ってね」  孫思いの祖母――のよい話風だが、突っ込みどころは多い。  桂奈は困ってしまって、上司の男たちを振り返る。しかし彼らはほぼ同時に、素早くどこかを向いて桂奈から目を逸らした。 (助けてよ……)  役に立たない男どもに見切りをつけ、桂奈は幸代に振り返る。幸代は短くなったタバコを、苛立たしげに近くのスタンド灰皿に押しつけた。 「桂奈ちゃんからも言ってやってよ。ソープ嬢は年齢じゃないって言ってんのに、わかんない坊やたちでさ」 「えぇ……」  桂奈はいよいよ困ってしまって、半裸の若者たちを振り返った。  シュウイチとナオヤは、せいぜい二十歳ぐらいにしか見えない。幸代の孫と同世代だろう。  どうしても、詐欺の臭いがする――。 「絶対に払いたくないです! だって……俺のばあちゃんより年上だし、このお婆さん!」  華奢な美少年だが、負けん気は強いらしいナオヤが、桂奈に強く抗議する。  やっぱり――桂奈はそう思って、老年の店長を見た。 「店長……これはさすがに、詐欺じゃない? 指名フリーで入ったにしても……彼らに幸代さんじゃ……」  知り合いの女性を前に、若い男の子にお婆さんじゃかわいそう、とも言えず、桂奈は言葉を濁しまくった。  桂奈の説得に、これ以上揉めても無駄と諦めたのか、店長はガックリと肩を落とした。 「……わかりましたよ。じゃあ、サービス料はいいです。でも、先に払った入浴料は返しませんよ? お客さんたちは、逆3Pの指名なしで構わないって、一度は納得してるんですから」
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